不倫の定義、浮気との違いや法的な不貞について
「不倫」と聞いたとき、思い浮かべるイメージは人によって異なるものです。
基本的には「既婚者がパートナー以外の異性と恋愛関係になったら不倫」
とはいえ、「肉体関係がなくても恋愛感情があれば不倫」なのか、「恋愛感情がなくても体の関係があれば不倫」になるのかなど、考え始めたらよくわからない方が多いのではないでしょうか?
実は法律的には「不倫(不貞)」の定義がはっきり決まっています。
今回は不倫や法的な不貞の定義、浮気との違いについて説明します。夫や妻が不倫、浮気していて悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.不倫とは
不倫とは、もともとは「人の倫(みち)にはずれること」を意味します。
そこから転じて「婚姻関係にある人が倫を踏み外して別の異性と関係を持った場合」を不倫といいます。
基本的には「既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係を持って交際すると不倫」といえるでしょう。よく「愛人を囲う」といった表現もしますが、愛人を作るのは不倫関係を意味します。
ただ、不倫は法的な用語ではありません。現実には人によって異なるイメージを持っています。
- キスをしたら不倫
- 恋愛感情があれば不倫
- デートしたり食事をしたりしたら不倫
- 恋愛感情がなくても風俗店に通ったら不倫
一般用語としての「不倫」は、厳密な意味での不倫よりも広い意味で使われているといえるでしょう。
2.法律上の不貞とは
法律用語では、不倫を「不貞(ふてい)」といいます。
不貞という場合、不倫よりも明確に定義づけがなされています。
不貞=「配偶者のある人(既婚者)が配偶者以外の人と肉体関係を持つこと」
法的に不貞という場合、必ず「肉体関係」が必要です。キスをしただけ、恋愛感情をもっているだけでは不貞になりません。
内縁関係でも「不貞(不倫)」になる
不貞や不倫は「配偶者のある人が配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」ですが、ここでいう「配偶者」は必ずしも法律婚の配偶者とは限りません。
内縁関係であっても「不貞(不倫)」は成立します。内縁関係とは、婚姻届を提出せずに事実上の夫婦関係を継続しているカップルです。最近では、夫婦別姓を名乗るために内縁関係となっているカップルも増加傾向にあります。
内縁関係の場合、婚姻届を提出していないので名字や戸籍は別ですが、法律による保護は及びます。配偶者が別の異性と男女の関係を持ったら「不貞(不倫)」が成立し、慰謝料請求が可能となると考えましょう。
3.不倫と浮気の違い
不倫や不貞と似た言葉として「浮気」があります。浮気と不倫は何が違うのでしょうか?
3-1.肉体関係がなくても浮気になる
浮気は、「浮ついた気持ち」という意味です。すなわち定まったパートナーがいても、パートナー以外の人へ気持ちが向いてしまうと浮気といえるでしょう。
つまり「浮気」という場合、必ずしも肉体関係は必要ではありません。
- お互いに恋愛感情を持っている
- デートしている
- しょっちゅう長電話したりLINEで男女の親しげなメールを交わしたりしている
- キスをする
- 手をつないだ
上記のような事情があると「浮気」になります。
このように浮気の場合には「肉体関係がなくても成立する」点で、不倫や不貞と異なるといえます。
3-2.婚姻関係がなくても浮気になる
不貞、不倫というためには「少なくとも一方の配偶者が既婚者」でなければなりません。中には「どちらも既婚者」という不倫も存在し、両方既婚者の不倫を「ダブル不倫(W不倫)」とよぶこともあります。
単なる彼氏彼女の場合には「不倫」「不貞」にはなりません。
一方浮気の場合には、彼氏彼女の関係にも使われます。結婚も婚約もしていなくても、彼氏や彼女が別の異性と恋愛関係になったら「浮気」というケースが多いでしょう。
このように不貞や不倫と浮気には「婚姻関係が必要かどうか」という点でも違いがあります。
4.不貞(不倫)が行われた場合の効果
不倫や不貞が行われると、法的にはどういった効果が発生するのでしょうか?
4-1.離婚原因になる
既婚者がパートナー以外の異性と肉体関係をもって「不貞」すると、不貞された配偶者は不貞した配偶者へ「離婚」を請求できます。不貞は配偶者への重大な裏切り行為であり、不貞されると夫婦関係が破綻してしまうからです。
たとえば夫が妻以外の女性と肉体関係を持ったら、妻は夫へ離婚を請求できます。夫が離婚を拒否し続けても、最終的に妻が「離婚訴訟」を起こしたら離婚が認められるでしょう。
このように「不貞」があると離婚原因になる、というのが1つ目の不貞(不倫)の効果といえます。
4-2.慰謝料が発生する
不貞や不倫が行われると、不倫されたパートナーは不倫したパートナーへ「慰謝料」を請求できます。慰謝料とは、故意や過失にもとづく加害者の違法行為によって被害者が受けた精神的苦痛をやわらげるための賠償金です。不倫されると、人は多大な精神的苦痛を受けるため、その苦痛をやわらげるために「慰謝料」を加害者へ請求できます。
また不倫の慰謝料は、パートナーだけではなく不倫相手にも請求可能です。
たとえば夫が妻以外の女性と不倫したら、妻は夫と不倫相手の両方へ慰謝料請求できると考えましょう。
4-3.夫と不倫相手の関係
夫に不倫されて夫と不倫相手の両方へ慰謝料請求するとき、夫と不倫相手の関係は「連帯債務」になります。
連帯債務とは、お互いが債務の全額について責任を負う関係です。
たとえば慰謝料が300万円の場合、夫も不倫相手も両方が300万円まで払わねばなりません。妻から慰謝料請求されたとき「私は半額しか支払いません」などと反論できないということです。
妻側からしてみると、夫と不倫相手のどちらに慰謝料を請求してもかまいませんし、両方へ同時に請求してもかまいません。どちらか払ってもらえる方から支払いを受ければ良いので、お金のある方へと請求すると良いでしょう。
4-4.浮気の場合には離婚・慰謝料請求できない可能性がある
浮気の場合にも離婚や慰謝料を請求できるのでしょうか?
浮気という場合「肉体関係」がないケースも含まれます。この場合、法律上の不貞にならないので、離婚原因になりません。また慰謝料も基本的には発生しません。
一方で、肉体関係があれば「不貞」になるので、離婚や慰謝料請求が可能となります。
4-5.彼氏彼女の浮気では慰謝料請求できない
浮気という場合、配偶者間ではなく「彼氏彼女」の問題であるケースも少なくありません。 彼氏や彼女が浮気したとしても、基本的に慰謝料は請求できないと考えましょう。 肉体関係があっても慰謝料は発生しません。結婚していない以上は「自由恋愛」が認められるからです。
ただし「婚約」が成立している場合、別の異性と肉体関係を持つと婚約者への裏切り行為となり、違法な「婚約破棄」と評価されます。 よって、婚約者が別の異性と肉体関係をもったら、婚約者と浮気相手に慰謝料を請求できると考えましょう。
また「内縁」が成立している場合には、婚姻届を提出していなくても法律婚の夫婦と同じように扱われます。配偶者が肉体関係をともなう浮気をしたら、慰謝料請求が可能となります。
5.不倫慰謝料の相場
パートナーが不倫したときの慰謝料の相場はどのくらいになるのでしょうか? 不倫慰謝料の金額は「離婚するかしないか」で大きく異なります。離婚しないなら慰謝料は100万円以下の低額となるでしょう。 一方離婚するなら100万円は超えますし、ケースによっては300万円以上になる可能性もあります。
また離婚する場合、婚姻年数が長ければ長いほど慰謝料額が上がる傾向があります。 婚姻年数が1~3年程度の場合、慰謝料は100~150万円程度です。 3~10年の場合、慰謝料額が徐々に金額が上がっていき、婚姻年数が10年になると300万円程度となるケースが多数です。
さらに不倫の期間や悪質性、被害者がうつ病になったか、不倫相手が妊娠したかなど、さまざまな状況によっても慰謝料の金額は変わってきます。 個別のケースで「どのくらいの慰謝料額が適切か」知りたい場合には、弁護士に相談してみてください。
6.1回だけの遊びでも不倫(不貞)になるのか
「1回だけの遊び」や「風俗店に行った場合」にも不倫になるの? という疑問の声もよく聞かれます。
不倫、不貞の定義は「既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係をもつこと」です。ここからすると、1回だけの遊び、1回だけ風俗店に行った場合にも「不貞(不倫)」になるといえそうです。
ただ現実に慰謝料請求の裁判になると、1回風俗店に行っただけでは「夫婦関係が破綻していない」とみなされる可能性があります。その場合には「離婚」も「慰謝料」も認められない可能性があると考えましょう。慰謝料が認められるとしても、低額になる可能性が濃厚です。
不貞や不倫を理由に離婚、慰謝料請求するには、ある程度精神的に強固なつながりがあり、継続性がある方が確実といえるでしょう。
7.不倫を証明できなければ離婚も慰謝料も請求できない
配偶者が自分以外の異性と肉体関係を持っているなら、法的に離婚や慰謝料請求が可能です。ただしこのとき「証拠」が必要となるので注意しましょう。 慰謝料請求をされると、多くの人は「不倫なんかしていない」と否定するものです。相手に否定されたとき、証拠がなかったからそれ以上追及できなくなってしまいます。 裁判をしても証拠がなければ、負けてしまうでしょう。 離婚も慰謝料も認められず、踏んだり蹴ったりになってしまうおそれがあります。
配偶者に不倫されて離婚や慰謝料請求をしたいなら、必ず行動する前に確実な不倫の証拠を入手しておかねばなりません。
8.不倫の証拠とは?
8-1.不倫の証拠集めでは「肉体関係の証明」が重要
不倫の証拠を集めるときには、「肉体関係の証明」が極めて重要です。
不倫の定義は「既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」だからです。「肉体関係」を立証できないと不倫の証拠になりません。
たとえばLINEで親しげなメッセージを交わしていても、肉体関係がわからない内容では不充分です。
不倫の証拠集めをするときには、なるべく「直接的に肉体関係を証明できるもの」を探しましょう。
8-2.不倫の証拠として有効なもの
具体的には、以下のようなものが不倫の証拠として有効です。
- 相手の家に泊まった、一緒に旅行に行った、ホテルに行ったことがわかるLINEのメッセージ、メールなど
- 相手の家に泊まったことがわかるブログやSNSの投稿
- 性行為しているときにふざけて撮影した写真や動画
- 相手方らがラブホテルから出てきたところを押さえた写真
- 夫が不倫相手の家に泊まったときに現場を押さえた写真
- 不倫相手やパートナーや不倫を認める「自認書」
8-3.間接的な証拠を組み合わせる方法
とはいえ、肉体関係を直接証明する証拠を集めるのは簡単ではありません。 実は1つの証拠では肉体関係を証明できない場合、複数の証拠を組み合わせて証明する方法もあります。一つひとつは不完全であっても、多数の証拠を組み合わせて不倫関係を推測させる方法です。 以下のようなものを集めましょう。
- 電話の通話記録
- クレジットカードの明細書
- 交通ICカードの記録
- LINEやメールのメッセージ
8-4.自力で証拠を集めるのが難しい場合
不倫の証拠を集めようとしても、自力ではなかなか入手できないケースが少なくありません。困ったときには探偵事務所の力を借りましょう。 探偵事務所は浮気調査の専門家です。依頼すると、配偶者や不倫相手の後をつけて、ラブホテルに入るところや不倫相手の家に宿泊する現場などを押さえるために行動します。現場を押さえたら、テキストや画像、動画に起こして「調査報告書」を作成して依頼者へ交付します。 しっかり不倫の現場を押さえた調査報告書は、裁判でも不倫の証拠として利用できます。
ただ探偵事務所といっても千差万別で、浮気調査に強いところもそうでないところもあります。調査報告書も、きっちり作ってくれるところとそうでないところがあり、費用も大きく異なります。
浮気調査のために探偵事務所に調査を依頼するなら、親身になって相談に乗ってくれて、ベテランのスタッフが揃っておりカメラなどの機材もしっかり整えていて、費用が高すぎないリーズナブルな業者を探しましょう。
9.不倫されたときの対処方法
もしも信じていたパートナーに裏切られ、「不倫」が発覚したらどうすれば良いのでしょうか?
9-1.不倫の証拠を集める
まずは不倫の証拠をしっかり集めましょう。不倫の疑いが濃厚でも、証拠がなかったらしらを切られてしまうリスクが高いからです。相手方が否定できないくらい確実な証拠を入手するのが理想です。
相手のスマホやPCの中身を見たり、カバンや財布などの所持品を確かめたり、あるいは探偵事務所に依頼したりして、証拠集めを進めてみてください。
9-2.離婚するかどうか検討する
不倫の証拠が手元に揃ったら、次は「離婚するかどうか」を検討しましょう。不倫されたからといって、必ずしも離婚する必要はありません。不倫相手と別れてもらって復縁するケースも多々あります。特に幼稚園や小学校低学年などの小さい子どもがいるご家庭の場合、あえて離婚せず夫婦関係を修復するメリットが大きくなるでしょう。
夫がさほど不倫相手にのめり込んでおらず「単なる遊び」であれば、反省して家に戻ってくる可能性も十分にあります。
一方、夫が不倫相手に本気になっていて夫婦関係を修復できないケース、子どももおらずお互いに気持ちが冷めてしまっているケースなどでは、離婚に向けて進めると良いでしょう。
9-3.離婚するなら慰謝料を請求する
もしも離婚するなら、相手に離婚を突きつけましょう。その際、きっちり慰謝料も請求すべきです。
不倫慰謝料は不倫相手にも請求できるので、夫と不倫相手の両方へ慰謝料請求してみてください。不倫相手に対しては「内容証明郵便」を使って慰謝料請求書を送付するケースが多数です。
9-4.離婚条件を決める
離婚するなら、慰謝料以外の離婚条件も取り決めなければなりません。財産分与、親権、養育費などの事項を決めて、協議離婚合意書を作成しましょう。
このとき作成する合意書は「公正証書」にしておくようお勧めします。公正証書があれば、将来慰謝料や養育費が支払われなくなったときに、すぐに相手方らの給料や預貯金を差し押さえて回収できるメリットがあります。
9-5.復縁するなら、不倫相手に慰謝料請求するかどうかを検討する
夫と別れずに復縁するなら、不倫相手に慰謝料請求するかどうかを検討しましょう。
慰謝料にこだわらず、不倫相手と夫を確実に別れさせるため「2度と関わらない」と約束させた上で「約束を破ったら違約金を支払います」と誓約させる方法も有効です。
特に不倫相手がお金を持っておらず支払能力がないなら、慰謝料よりも確実に別れさせることを優先する方が良いでしょう。
まとめ
不倫とは、既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つことです。法律上の不貞と同じ意味と考えましょう。ただし浮気とは多少ニュアンスが異なります。配偶者に不倫されたら、しっかり証拠集めをして離婚するかどうかを検討しましょう。困ったときには弁護士や探偵事務所へ相談してみてください。