不倫を規制する法律は?罰則、慰謝料、不法行為について解説
最近では、芸能人の不倫がセンセーショナルに報道される機会も多く、世間で不倫への関心が高まっています。
不倫は法律に触れるのでしょうか?
確かに不倫を規制する法律はありますが、不倫には「罰則」はありません。
今回は不倫を規制する法律の仕組みについて、わかりやすく解説します。
不倫相手に処罰を与えたい、慰謝料請求したい方や請求された方はぜひ、参考にしてみてください。
1.法律には「刑事」と「民事」の違いがある
不倫は違法です。
ただし「刑事的」には違法ではないので、罰則は適用されません。
一般に「刑事」と「民事」の違いがわからなくて混乱している方が多いので、まずは法律における「刑事」と「民事」の違いについて、解説します。
1-1.刑事とは
刑事とは、わかりやすくいうと「犯罪」になる法律です。
刑事的な法律の代表格が「刑法」となっています。
刑事的な法律に触れると、その人は「犯罪者」となって処罰されます。
たとえば人の物をとったら「窃盗罪」、暴力を振るったら「暴行罪」「傷害罪」が成立します。これらの罪が成立するのは「刑法」という法律で窃盗や暴力行為が禁止されているからです。
刑事的な罪が成立するには、法律によって処罰が定められていなければなりません。法律が処罰を定めていない行動をしても、刑事罰は適用されません。
相手に迷惑をかけたとしても、法律による罰則がなければ処罰はされないのです。
1-2.民事とは
民事とは、わかりやすくいうと「民間人同士のもめごと」に関する法律です。
民事的な法律の代表格が「民法」となります。
民法では、いろいろな社会ルールが定められています。
たとえばお金を借りたら返さなければならない、家を借りたら賃料を払わねばならないなど。
その中には「相手に迷惑をかけてはならない」という法律もあります。故意や過失によって相手に迷惑をかけて損害を発生させたら、損害賠償をしなければなりません。民法が定める「相手に迷惑をかけてはならない」法律を「不法行為」といいます。
以上を前提に、不倫にどういった法律が適用されるのかみていきましょう。
2.不倫は刑事的に違法ではない
日本には、不倫を刑事的に罰する法律はありません。よって不倫は犯罪ではなく、不倫しても処罰されません。
夫や妻の不倫相手がどんなに憎らしくても、刑事事件として処罰してもらうことはできないので、注意しましょう。
3.不倫は民事的に違法になる
不倫は、民事的に違法行為と評価されます。
具体的には民法上の「不法行為」になります(民法709条)。
民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
不法行為が成立する要件は、以下の通りです。
- 故意や過失がある
- 他人の権利や法律上の利益を侵害した
- 損害を発生させた
3-1.故意や過失がある
故意とは「わざと」行うこと、過失とは「うっかり不注意で」行うことです。
不倫した人は、通常「相手や自分に配偶者がいる」とわかって不倫関係を継続しているでしょう。そこで「故意」があるといえます。
「相手が既婚者と知らなかった」場合でも「当然気づくべき状況」であれば「過失」が認められるでしょう。
3-2.他人の権利や法律上の利益を侵害した
不法行為が成立するには「他人の権利」や「法律上の利益」を侵害する必要があります。
結婚している人には「平穏な婚姻生活を守る権利や利益」が認められます。不倫すると、相手の配偶者の「平穏な婚姻生活を守る利益」を侵害してしまうでしょう。そこでこの要件も満たします。
3-3.損害を発生させた
不法行為が成立して賠償金を払わねばならないのは「損害を発生させた」場合です。迷惑をかけても損害が発生しなければ、弁償する必要はありません。
不倫すると、相手の配偶者に大きな「精神的苦痛」を与えてしまいます。目には見えないけれど、精神的な損害が発生するという理解です。精神的苦痛を発生させたら、その苦痛をやわらげるために「慰謝料」というお金を払わねばなりません。
そこで不倫したら不法行為が成立し、相手の配偶者に慰謝料を払わねばならないのです。
4.法律上の不貞と不倫について
不倫と法律の関係を理解するためには、法律上の「不貞」に関する知識も必須です。
不貞とは、法律用語で不倫を意味する言葉。ただし不貞と不倫には微妙なニュアンスの違いがあるので注意しましょう。
不貞とは「配偶者のある人が別の異性と肉体関係を結ぶこと」を意味します。つまり不貞が成立するには「肉体関係」が必要となります。仲良くしていても、肉体関係がなければ不貞になりません。
配偶者が誰かと不倫しているので慰謝料請求したいなら、肉体関係の証拠が必要です。LINEやメールのやり取りだけでは不足する可能性が高いので、注意してください。
相手に慰謝料請求する前に「肉体関係を証明できる証拠」を集めておく必要があるといえるでしょう。
以下で不倫が法律上の不貞になるケースとならないケースについて、具体例を出してご説明します。
4-1.不倫が法律上の「不貞」になる場合
以下のような場合、不倫が法律上の不貞になります。
- 不倫相手の家に宿泊して肉体関係をもった
- ラブホテルで肉体関係をもった
- 一緒に旅行して肉体関係をもった
- 不倫相手と同棲している
上記のような事実を証拠によって証明できれば、法律上の「不貞」が認められるでしょう。
4-2.不倫が法律上の「不貞」にならない場合
以下のような場合には、不倫されても「不貞」にならない可能性が高くなります。
- 単にLINEやメール、SNSなどで『好き』『愛してる』『会いたい』『楽しかった』など親しくやり取りしている
- 単にレストランで食事を楽しんだりテーマパークに出掛けてデートしたりしている
- 手をつないでいる、キスやハグをしている
- プレゼントを贈り合っている
- 頻繁に電話やLINEでやり取りしている
上記のような事実だけでは「不貞」とは言いがたく、慰謝料請求は難しくなるでしょう。
4-3.風俗を利用した場合
配偶者が風俗を利用した場合にも、肉体関係があれば「不貞」になるのが原則です。
ただし風俗店に行ったのが1回だけ、などの軽微なケースでは、不貞としてカウントされない可能性もあります。
また風俗店に行っても「本番行為」をしないケースもあるので、必ずしも不貞になるとは限りません。風俗嬢はたいてい偽名を使っているので、慰謝料請求するには本人特定する必要もあります。
夫が風俗店通いをしている場合、「そもそも不貞になるのか」「証拠集め」など、法律的な解釈や対応が複雑になりやすい傾向があります。困ったときには弁護士に相談しましょう。
5.不倫と離婚の法律
不倫に関する法律は「慰謝料」や「不法行為」だけではありません。
「離婚」に関する法律も問題となります。
民法は、いくつかの「法定離婚原因」を定めています。法定離婚原因とは、該当すると裁判で離婚が認められる事情です。
民法が定める法定離婚原因は、以下の5つとなります。
- 不貞
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復しがたい精神病
- その他婚姻生活を継続し難い重大な事由
このように、法律において不貞(不倫)ははっきりと「離婚原因」とされています。配偶者が不倫したら、「相手が離婚を拒絶しても」裁判によって離婚できます。
5-1.不貞で離婚するには証拠が必要
ただし裁判で「不貞」による離婚を認めてもらうには、「不貞の証拠」が必要です。
裁判では、証拠がないことは認められません。
裁判で勝つためには「配偶者と不倫相手の肉体関係」を立証できる資料を集めなければならないので注意しましょう。
配偶者に不倫されたときには、慰謝料請求するにも離婚請求するにも「肉体関係の証拠」は非常に重要なので、証拠集めは綿密に行わねばなりません。
5-2.協議離婚、調停離婚の場合
なお協議離婚であれば、お互いの了解があれば離婚できるので、法定離婚原因があるかどうかは問題になりません。調停でも法定離婚原因は不要です。
6.不倫トラブルが刑事事件になる場合とは
不倫は刑事的な犯罪ではないので、基本的には「刑事罰」が与えられません。
ただし不倫トラブルが「刑事事件」になるケースもあります。以下でどういったケースで不倫の当事者に罰則が与えられるのか、みていきましょう。
6-1.暴力を振るった
不倫トラブルが発生すると、殴り合いになってしまうケースも少なくありません。ときには刀傷沙汰になる事例もあるでしょう。
暴力を振るったら、刑法に触れます。相手がけがをしなかったら暴行罪、相手がケガをすると傷害罪が成立します。
暴行罪の刑罰は2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料(刑法208条)。
傷害罪の刑罰は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(刑法204条)。
なお拘留とは30日未満の期間、身柄拘束される刑罰です。
科料は9,999円までの金銭支払いの刑罰を意味します。
不倫相手から暴力を振るわれたら、暴行罪や傷害罪で訴えて処罰を与えられる可能性があります。
6-2.脅迫した
不倫トラブルが発生すると、ついつい感情的になって相手を脅迫してしまうケースがあります。相手を脅迫すると、脅迫罪が成立します。
たとえば以下のような場合、脅迫罪が適用されるので注意しましょう。
- 殺すぞ!殴るぞ!などと告げる
- 脅迫状を送りつける
- 脅迫メールを送りつける
- 「家を燃やすぞ、ペットを殺すぞ」と告げる
- 子どもをさらうぞ!など子どもに危害を加えることを告げる
- 脅迫罪の刑罰は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑とされています(刑法222条)。
6-3.名誉毀損した
不倫トラブルでは、お互いに名誉を毀損し合うケースも少なくありません。
たとえば夫が不倫したとき、不倫相手の女性が妻の悪口をネット上に書き散らす可能性もあるでしょう。
公然と事実の摘示によって人の社会的評価を下げるような公表をすると、「名誉毀損罪」が成立します。事実を摘示せずに「バカ」などと侮辱しただけでも「侮辱罪」が成立します。
名誉毀損罪の刑罰は3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金刑(刑法230条)。
侮辱罪の刑罰は拘留または科料となっています(刑法231条)。
6-4.業務を妨害した
不倫の当事者が事業を営んでいる場合、相手方によって事業を妨害される可能性があります。
たとえば事業経営している夫の妻が不倫したとしましょう。このとき、妻の不倫相手が嫌がらせで夫の事業を妨害する可能性があります。たとえばネットでお店の悪口を書いたり、店で騒ぎを起こしたり、営業をやめさせるために爆破予告する場合などが考えられるでしょう。
業務を妨害すると「業務妨害罪」が成立します。刑罰は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑となります(刑法233条、234条)。
6-5.不倫の被害者が処罰されるケースもある!
実は不倫トラブルでは、不倫の「被害者」が刑事的な違法行為をしてしまうケースも少なくありません。そうなると、不倫相手から刑事告訴されたり被害届を出されたりして、処罰される可能性もあるので注意が必要です。
たとえば以下のような行動をすると犯罪になってしまうおそれがあります。
- 不倫相手に暴力を振るう
- 不倫相手に脅迫状を送りつける、脅迫メールを送る
- 不倫相手を監禁する
- ネットで不倫相手の悪口を書き込む
- 不倫相手に『慰謝料を払わないと不倫をばらすぞ』と脅す
- 不倫相手の会社に言って、周囲の社員の前で『この人は不倫している!』と騒ぐ
刑事事件になると、処罰される可能性が発生するだけではなく慰謝料請求でも不利になってしまうでしょう。相手に腹が立っても、違法行為をしてしまわないよう注意してください。
7.不倫で法律を味方につけるには証拠が必要
不倫されたら、不倫相手に慰謝料請求できます。また配偶者が拒絶しても、裁判すれば離婚が認められます。
ただ、そのためには「肉体関係」を証明するための証拠が不可欠です。 肉体関係を証明できないと、相手から『不倫していない』と反論されたとき、それ以上何も言い返せなくなってしまうからです。泣き寝入りのリスクも高まってしまうでしょう。
不倫で法律を味方につけるには「肉体関係」を証明できる証拠を集めなければなりません。
以下でどういった証拠があれば良いのか、ご紹介します。
7-1.直接不倫を証明できる証拠
- 相手の裸の画像や動画
- 性交渉しているときの画像や動画
- 外泊やホテル利用がわかるLINEメッセージやメールなど
- 外泊したことがわかる予約票やホテルの領収証など
- 日記にはっきり肉体関係を持った事実が記載されている
- 不倫相手や配偶者が『肉体関係をもちました』と認める自認書
上記のようなものがあれば、直接的な不倫の証拠となります。
ただ、直接肉体関係を証明できなくても、間接的な証拠をたくさん集めることで不倫を立証できる可能性があるので、以下でご紹介します。
7-2.間接的な不倫の証拠
- LINEやメールで親しくやり取りしている内容
- 仲良くデートしているときの画像や動画
- デートの予定や感想が書かれているスケジュール帳や日記
- 交通ICカード(不倫相手の自宅や会社近くの駅で乗り降りしている)
- ETCカード(車で不倫相手の自宅や会社近くへ通っている場合)
- クレジットカードの明細書(プレゼント代、デート代を支払っている)
- 通話記録(連日、深夜などに長時間通話している)
こういったものは直接「肉体関係」を証明できませんが、多くを集めることによって不倫を強く推測させることができます。
直接的に肉体関係を示せない場合には、できるだけたくさん間接証拠を集めましょう。
8.探偵事務所の調査報告書は有効
配偶者の不倫を証明するのに、探偵事務所や興信所の調査報告書は非常に有効です。
なお探偵事務所も興信所もほとんど同じものなので、違いを意識する必要はありません。
8-1.探偵事務所の調査方法について
探偵事務所に調査を依頼すると、専門のスタッフがビデオカメラをもって配偶者や不倫相手を尾行し、行動調査します。
相手方らがホテルに入ったり旅館に泊まったり不倫相手宅で一夜過ごしたりすると、画像や動画つきで証拠を残します。
調査結果は「調査報告書」という書類にまとめて渡してもらえます。
8-2.調査報告書は裁判でも使える
相手方らの不貞関係がわかる調査報告書があれば、後に裁判になっても不倫の有効な証拠として利用できます。
実際に、裁判の現場では多くのケースで探偵事務所の調査報告書が不倫の証拠として提出されており、裁判所が不倫を認定する根拠となっています。
探偵事務所の調査報告書があれば、相手から『不倫していない』などといわれて泣き寝入りする必要はありません。もしも自分で不倫の証拠を集めるのに限界を感じたら、探偵事務所に行動調査の相談をしてみてください。
まとめ
不倫されたとき、基本的に適用される法律は「民法」です。肉体関係を証明できる証拠を集めて、相手に慰謝料請求を行いましょう。証拠集めに困ったときには、探偵事務所に行動調査を依頼するようお勧めします。
探偵事務所にもさまざまな業者があるので、できるだけ良心的で浮気調査に強い調査会社を選びましょう。